スプレッドシートの混乱からAIを活用したインサイトへ:30日間のVibeコーディング現実チェック

なぜ創業者はExcelなしでは生きられないのか—そして彼らがそうすべき理由

読了時間: 7分
対象: AI開発を試すビルダー、手動の財務モデルに疲れた創業者

誰も語らない問題

どのピッチミーティングに入っても同じ光景を見る:VCが「解約率が2%下がったらどうなる?」と尋ねると、創業者の顔は真っ白になる。答えは47タブのExcelの悪夢の中に隠れている。数時間にわたる数式の探索、小さなデータ入力ミス、循環参照がすべてをクラッシュさせる。

これは珍しいことではなく、普通だ。多くのアーリーステージ企業は依然としてスプレッドシートを使った財務予測に頼っており、創業者は皆この経験を嫌っている。計算はシンプルだが痛みを伴う:複雑なモデルの構築には数日、更新には数時間、壊すのに数秒かかる。

この問題にはより良い解決策が必要だ。これがきっかけで、ある開発者は30日間を費やし、不可能に挑戦した—AIとバイブコーディングを使ったファイナンシャルアドバイザーの構築と、その過程での失敗、気づき、学びを記録しながら。

30日間の実験:数字で見る

設定:

  • 期間:30日間連続のバイブコーディング
  • プラットフォーム:クラウドベースの開発環境
  • 投資総額:$127 プラットフォームクレジット
  • 書いたコード行数:~3,500 (ほとんどAI支援)
  • 繰り返しとロールバック:73回

結果:

  • 初期関心:23人の創業者
  • 実際の登録者:2人
  • オンボーディング完了:3人
  • 支払い意欲:1人
  • 収益:$0 (月額$50のサブスクリプション)

対象範囲:

  • ユーザー:プレシードからシリーズAの創業者
  • 解決すべき核心問題:財務モデルの更新に時間がかかる
  • 試した解決策:AI搭載のファイナンシャルアドバイザー
  • 追跡した重要指標:計算の正確さ

Week 1:ハネムーンと現実の出会い

最初のビジョンは野心的だった:リアルタイムの財務ダッシュボード、会計ソフトとのシームレスなデータ同期、シナリオプランニングの即時対応、投資家向けエクスポートを数秒で。タイムラインは合理的に見えた:2〜3週間でローンチ。

しかし、そうはならなかった。

最初の週で3つの重大な見落としが明らかに。

見落とし#1:並列処理は機能しない
複数の指示を同時にAIに出すと混乱を招く。ダークモード、バグ修正、パフォーマンス改善を一つのプロンプトで求めると、フランケンシュタインの怪物のような製品になり、どれも満足に実現できない。解決策:一度に一つの指示を出し、完了を待ってから次に進む。

コスト: 6回のロールバック、$23 クレジット、3時間のロス

見落とし#2:UIの複雑さは trivial ではない
「夜間モード」の簡単なリクエストが47の不要な変更を引き起こす。白背景に白文字、見えないボタン、フォントの不一致でピクセル単位の調整が必要に。UIの実装には予想以上の3週間を要した。

見落とし#3:曖昧な指示は高コストなミスを生む
「もっと直感的にして」とだけ言うと、レイアウトの全面的な再構築に。正確な色、寸法、配置を詳細に指示したプロンプトにより曖昧さを排除。

突破口は、「私と理解を確認せずに変更しないでください」という一つの指示だった。この一言だけで、不要なイテレーションによる50ドル超のクレジット浪費を防げた。

中盤:壊れるとき

2週目に突入し、問題が顕在化。WiFiの不安定さでTypeScriptエラーのデバッグがほぼ不可能に。ロールバック機能は必須となり、1日に12回も元に戻すこともあった。

15日目にはクレジットの消費が急増。Week 1は34ドル、Week 2は93ドルに達した。各イテレーションのコストは2〜5ドル。これにより、週ごとの予算上限を設定し、それを超えたら一時停止して戦略的に振り返ることに。

$2 計算の危機

転換点は、テスターが重大な欠陥を発見したとき:財務計算が約**20%**誤っていた。顧客獲得コストは$50 と表示されたが、正しい答えは58.75ドルだった—資金調達の妨げになりかねない差異。

原因は、AIが用語について暗黙の前提を持っていたこと。例えば、「月次解約率」が年間率を意味したり、「顧客生涯価値」の計算に標準的な方法ではなく架空の式を使ったり。

これにより、重要な原則が浮かび上がった:AIの出力は必ず手動で検証すること。 検証用のスプレッドシートを並行して使うのが標準となった。曖昧なプロンプト「LTVを計算して」に代わり、次のように具体的な指示を出す。

「LTVを次の式で計算: ###平均収益/ユーザー × 粗利益率 $47 / 月次解約率」

「次の値を使う:」

  • 平均収益/ユーザー = 総MRR / アクティブ顧客数
  • 粗利益率 = (収益 - COGS) / 収益
  • 月次解約率 = 今月解約した顧客数 / 月初のアクティブ顧客数

計算過程をステップバイステップで示す。

これにより、精度は飛躍的に向上した。

ユーザーフィードバックがすべてを変える

2週間の構築後、最初のベータテスターグループから厳しいが示唆に富むフィードバックが得られた。

  • 計算の誤差が大きい
  • 50行以上のデータセットでエクスポートがクラッシュ
  • 主要機能がナビゲーションの奥に埋もれている
  • 初期の関心にもかかわらず、オンボーディング率は0%

一つのコメントが革命をもたらした:「もう一つの財務モデルツールはいらない。自分の数字が妥当かどうか教えてほしい。」

この気づきにより、プロダクトの方向性が一変。ツールは単なるスプレッドシートの改良版ではなく、アドバイザーとなるべきだと。単なる財務モデルアプリではなく、仮定を検証し、非現実的な予測を指摘し、業界標準と比較し、「もしも」シナリオに答えるAIコンサルタント。

このピボットにより複雑さは排除された。エンタープライズ連携や高度なバージョン管理、多人数コラボレーションの構築をやめ、最小限の実用的な製品に集中。

  • 手動の財務モデル入力
  • AIによる検証とベンチマーク
  • シナリオプランニング(最大3つのシナリオ)
  • 自然言語による財務指標の質問応答
  • 一般的なフォーマットへのエクスポート

技術的な障壁

3つの大きな技術的制約が明らかに。

言語選択の後悔:
TypeScriptから始めたことで摩擦が生じた。型エラーに何時間も費やす羽目に。今後は開発者の得意分野に基づき、人気ではなく適性を重視。

連携の約束と現実:
創業者からはQuickBooksとの同期について頻繁に質問があった。実際はOAuth 2.0のフロー、Webhookの検証、データマッピング、エラーハンドリング、トークンのリフレッシュ、会計ルールの検証など、多くの作業が必要で、これはバイブコーディングの範疇外。

財務計算の正確性:
NPVやコホート維持曲線、LTVなど複雑な式はAIの支援の限界を超える。「簡単そう」に見えるプロンプトでも誤った自信のある出力を生む。信頼できる結果を得るには、明示的な式と超具体的な指示が必要。

ピボットの決断

28日目、スケールダウンが必要と判断。フルビジョンはあまりにも複雑すぎた。コアのMVPは次のようにリリース。

✅ 手動の財務モデル作成ツール
✅ 検証用AIアドバイザー
✅ 基本的なシナリオプランニング
✅ エクスポート機能
✅ 自然言語Q&A

❌ リアルタイム連携 (遅延)
❌ 高度なコラボレーション (遅延)
❌ 企業向けセキュリティ (遅延)

時には少ない方が良い。

成功したこと、失敗したこと、これから

( 重要な原則

1. 外科手術的な正確さは曖昧な指示に勝る
「良くして」→無駄。「#0066CCにボタンを変え、フォントを16pxに、パディング8px追加」→成功。

2. 逐次的な更新を優先
一つの指示を出し、待ち、確認し、次に進む。AIにマルチタスクさせない。

3. 手動検証は絶対に必要
特に財務の文脈では、AIの計算結果を鵜呑みにしない。

4. ロールバックは躊躇なく
30日で73回のロールバックは、迅速な反復と恐れずに行うことを意味する。リバートはデバッグよりも速い。

5. ユーザーは何を必要としているか知っている
最も重要な気づきは、聞き取ること:「数字が妥当か教えて」との声を反映した戦略。

) 明日変わること

もし最初からやり直すなら、優先順位はこうなる。

  1. 10人のユーザーインタビューを事前に行う—Day 1で「アドバイザーではなくツール」という気づきを得る、Day 21では遅い
  2. Pythonを選ぶ—言語の得意分野が重要、人気よりも
  3. クレジット予算200〜300ドルを設定—Promptエンジニアリングを促進し、イテレーションの死に陥るのを防ぐ
  4. 手動プロセスを最初に、自動化は後で—需要を検証してから連携を構築
  5. 2週間のMVP期限を設定—機能過多を防ぎ、優先順位を明確に

( 完全に省略すべきこと

  • 夜間モード )誰もリクエストしなかった; 3日かかった###
  • 完璧なUI ###創業者は機能を優先し、美観は二の次###
  • 連携の約束 (手動ワークフローをまず検証)
  • 高度な機能 (支払いユーザー10人を獲得してから拡張)

今後の道筋

成功は完璧さを意味しない—それは、創業者の一人が月50ドル払うといえば、それが検証となる。

現実的なロードマップ:

フェーズ1 (5〜8週): vibeコーディングでコア価値提案を検証。ターゲット:月50ドルの支払い顧客10人。成功指標:月次解約率<10%、NPS>40。

フェーズ2 (50〜100人の顧客獲得後): 伝統的な開発へ移行。フィンテック開発者を雇用。連携を構築。エンタープライズ機能を追加。予算:5万〜10万ドル。

Vibeコーディングの限界

得意な分野:

  • 迅速なプロトタイピング(数週間 vs. 数ヶ月)
  • CRUD操作
  • AI API連携
  • エクスポート機能
  • ランディングページ
  • 高速なイテレーション

壁にぶつかる分野:

  • 複雑な財務式(NPV、コホート維持曲線)
  • 企業向けAPI連携(OAuth、Webhook)
  • バックグラウンドのデータ同期ジョブ
  • マルチテナントセキュリティアーキテクチャ
  • パフォーマンス最適化(<300msクエリ)
  • リアルタイムコラボレーション

卒業の目安:10人以上の有料顧客から、Vibeコーディングでは根本的に実現できない機能リクエストが出たとき。

AI開発を試すすべてのビルダーへの教訓

始める前に:

  • 実際に理解している言語を選ぶ
  • 週ごとのクレジット予算を設定し守る
  • 「完了」の定義を文書化
  • 3人の実在のテスター(関心のない観察者)を見つける
  • まず10人以上の潜在ユーザーにインタビュー

構築中:

  • 1回のイテレーションに1つのプロンプト、完了を待つ
  • 曖昧な用語は明示的に定義(「直感的」「クリーン」「シンプル」)
  • すべての計算は独立して検証
  • 毎日の支出を追跡
  • 重要なピボット前に動作中のバージョンのスクリーンショットを保存

一歩引くべきとき:

  • 同じエラーが5回以上続く
  • 説明が多すぎて構築よりも会話になっている
  • テストユーザーがコアワークフローを完了できない
  • 企業向け機能リクエストが絶えない
  • クレジットが支払いユーザーなしで使い切られる

結論:

Vibeコーディングは30日で動くMVPを$127で作り上げた。それは、創業者がExcelを嫌う根本的な問題を証明し((創業者はExcelを使い続ける))、解決策も見つけた((彼らはアドバイザーを必要としている、ツールではない))。計算の正確さには限界があり、AIは財務式の具体性には苦戦することも判明。

最も重要なのは、支払う意志のある創業者一人の存在が、全実験の検証となったことだ。

この旅は30日を超えて続く。次のフェーズは、検証を収益に変え、アイデアから持続可能なプロダクトへとスケールし、迅速なプロトタイピングから本格的な開発へと移行するタイミングを見極めることだ。

47タブのExcelモデルを廃止しよう。すべての創業者は、リアルタイムの財務インテリジェンス、AIによる解説、即時シナリオプランニング、投資家向けエクスポートを手に入れる価値がある。ツールは存在する。あとは、創業者が実際に使うかどうかだ。

Day 31は明日始まる。

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